マルチゾーンMSMA

マルチゾーンセンシングの必要性

後方散乱通信には、端末が質問器から受けた電波の反射を用いるため通信距離が短いという短所があります。航空機や橋梁などといった大型の構造物のSHMにMSMAを適用することを考えると、一つの質問器の覆域だけでは不十分な場面が考えられます。そのような場合は、複数の質問器を用い、それぞれの覆域を合わせること(マルチゾーン)で大型構造物全域をカバーします。

マルチゾーンセンシングのイメージ:複数の質問器の覆域を合わせて大型構造物全域をカバーする。

ゾーン間干渉への対処

マルチゾーンセンシングを実現するにあたって問題になるのは、複数の質問器の覆域が重なる領域に配置されているセンサ端末です。大型構造物全域を隙間なくカバーするためには、どうしてもそのような領域が生じます。このとき、この重複した領域に存在するセンサ端末は、複数の質問器からの電波全てに対してサブキャリアを生成してしまいます。そのため、それぞれの質問器が独立に覆域内のセンサ端末に対してサブキャリアを割り当てると、覆域が重なっているそれぞれの質問器で異なる周波数のキャリアを用いたとしても、質問器をまたがってサブキャリアが重複してしまう可能性があります。この問題をゾーン間干渉と呼んでいます。

個々の質問器が独立にセンサ端末にサブキャリアを割り当てるとゾーン間干渉を引き起こす可能性がある。

ゾーン間干渉を避けるには、単純には、覆域が重複する質問器の間で共通のサブキャリアを割り当てないようにするチャネル予約方式が有効です。また、MSMAの基本の干渉除去に加えて、ゾーン間干渉を後から除去する手法の研究開発も行なっています。