後方散乱通信とは
後方散乱通信(バックスキャッタ通信)とは、電波の反射を用いる通信方式です。質問器が送出した電波を受けた端末が、これを反射する時に情報を載せることで、端末から質問器への情報送信を可能としています。反射波を変調するだけ、すなわち、端末が自ら電波を発していないため、端末を省電力かつ免許不要にすることができます。
バックスキャッタ通信の典型的な利用例としてUHF帯のパッシブRFIDシステムが挙げられます。特にパッシブRFIDにおいては、端末(RFタグ)が駆動するための電力を質問器から送出された電波から得ることによって、質問器から10m程度の距離にある電源を搭載していないRFタグ(パッシブRFタグ)から情報を得ることが実現されています。RFタグのチップに記録された識別子を返すだけでなく、温度や加速度などのセンサを搭載し、これらのセンサ情報を返すセンサ付きRFタグも実用化されています。最近では、センサ付きRFタグの中でも、センサを駆動するための電力も質問器から得ることにより、センサ側無電源でのセンシングを実現する製品も登場しています。
後方散乱通信の端末が反射波を変調する仕組み
後方散乱通信の端末、例えばパッシブRFIDシステムにおけるRFタグは、アンテナの整合状態を二通りに切り替えるためのRFスイッチを搭載しています。このスイッチを切り替えて端末からの電波の反射率を変化させることにより、端末で反射波を変調して質問器にデータを返すことができます。
後方散乱通信の端末が反射波を変調して返すにあたっては、質問器が送出した電波と同じ周波数(キャリア周波数)を用いる場合と、一定の周波数(サブキャリア周波数)だけキャリア周波数からずらしたサブキャリアを用いる場合があります。後者の場合、サブキャリア周波数による切り替えをRFスイッチに加えることで、質問器から受けたキャリア周波数の信号にサブキャリア周波数の信号を掛け合わせてサブキャリアを生成します。